Strength
当社の特長
STRENGTH 3 事例
千代田化工建設株式会社
図面と3Dモデルを見ながら
配管施工状況を確認できるiPad用ツールを共創し、
施工管理業務の負荷を低減。
千代田化工建設株式会社(以下、千代田化工建設)は、プラントの安定稼働に欠かせない配管サポートの設置状況を確認する作業を効率化かつペーパーレス化するために、モバイルツールの開発を計画した。
パートナーとなったTIS千代田システムズの伴走型支援により、3Dモデル閲覧にも対応したiPad用ツールの開発を実現した。
背景
膨大な紙に依存した「配管サポート」の確認作業の効率化を目指す
プラントエンジニアリング大手の千代田化工建設は、プラントの設計・構築から運用保守に至るまで、あらゆるフェーズでITを積極的に活用している。今回、新たなテーマとなったのが、膨大な紙に依存した配管サポート※の設置状況確認作業のペーパーレス化であった。
千代田化工建設の村田史彦氏は、この確認作業の重要性をこう説明する。「プラントの圧力テスト前に、配管サポートが設計どおりに正しく取り付けられているか、材質や寸法に誤りはないか等を確認する業務は、プラントの品質を担保する上で欠かせない業務です」。
従来、この確認作業にあたっては、現場にP&ID(配管計装図)、配管アイソメトリック図(以下、アイソ図)、サポートの図面、検査記録表など膨大な図面と書類を持ち込む必要があった。「大規模なプラントになると、大型のバインダーを数冊持ち運び、実際の状況と照らし合わせて確認を行う場合もありました」(村田氏)。現場で確認結果を検査記録表に記録し、事務所に戻ってから、配管サポートの状況を管理する既存システム「PST(Pipe Support control Tool system)」にPCから情報を登録するという、いわば二度手間が生じていた。
この紙に依存した業務プロセスは、現場担当者の物理的な負荷が大きいことや、システムへの入力時にミスが起きやすいといった課題を抱えていた。そこで千代田化工建設は、配管サポートの設置状況確認作業のペーパーレス化を目指し、既存のPSTシステムを補完する、新たなモバイルツール開発を構想した。
※ 配管サポート:配管を支持する部品で、配管が安全かつ効率的に機能するために不可欠な要素。さ まざまな形状・種類があり、配管に直接溶接するタイプ、大型の架台タイプ、振動を吸収するスプリ ングサポートなど多岐にわたる。
目標
TIS千代田システムズをパートナーとしてモバイルツールの開発計画を立案
千代田化工建設が構想したのは、紙の図面や報告書を電子化し、モバイル端末1台で持ち運べるようにすること。「PSTモバイル」と命名された新ツールを実現するため、長年にわたり千代田化工建設のITシステム開発・運用を支えてきたTIS千代田システムズがパートナーに指名された。
両社はまず、モバイルで使用するデバイスの検討から着手した。TIS千代田システムズの青山宗平はこう振り返る。「ノートPCも検討しましたが、現場での取り回しのしやすさで難があり、多くのプラントで求められる防水・防塵対応のノートPCは非常に高額。その点、iPadはタップ操作で扱いやすく、防水・防塵対応ケースを装着すれば要件も満たせるという利点から、採用の方向で意見が一致しました」。
続いて両社はPSTモバイルの具体的な要件を協議。今回のツールの大きな特徴として、モバイルデータ通信を行わずに主要機能を使えるようにするという条件が定められた。
「プラント建設現場は携帯電波のエリア外であったり、そもそもデータ通信が禁止されていたりするケースも多くあります。そのため、現場へ出向く前に事務所で必要な図面データ等をiPadにダウンロードし、現場ではオフラインで図面を見ながら検査結果を記録。そして作業完了後、事務所に戻ってWi-Fi経由でPSTシステムと同期する。このような運用スタイルを目標に、開発を進めることを決定しました」(村田氏)。
開発
ビューアーアプリとの連携で3Dモデルの閲覧を実現
今回の開発で大きな挑戦テーマとなったのが、iPadでプラント現場の3Dモデルを表示させる機能の実装であった。TIS千代田システムズは当初、iPadで直接、設計データから3Dモデルを描画することを検証したが、アプリプラットフォームなどの制約があり、ひとつのパーツを描画するだけでも数十秒を要するため他の方法を模索。その結果たどり着いたのが、3Dモデルの参照はサードパーティ製のビューアーアプリで行い、PSTモバイルからは3Dモデルの特定の箇所をフォーカスさせるアプリ間連携であった。「図面上で3Dモデルを見たい場所をタップすると、2~3秒で3Dモデルが表示され、十分に実用レベルをクリアできました」(TIS千代田システムズ 青山)。
そしてもうひとつの挑戦テーマが、インタラクティブなUIの実現。千代田化工建設の比嘉博幸氏はこう説明する。「設置状況入力のウィンドウが画面に常時表示されていると、図面が見にくくなります。そこで、図面上で、各サポートに記されている識別番号等をタップすると、該当する設置状況入力画面がポップアップ表示されるようにしたいと考えました」。
しかし、アイソ図やP&IDは大規模プラントでは数万枚に及び、ファイル形式も多岐にわたる。そこに含まれる文字列をタッチポイントとするUIを開発するには、図面内のサポート識別番号といった文字列の座標を特定することが技術的な課題となった。
TIS千代田システムズは、図面をすべてPDFに変換後、新規開発した中間プログラムで文字列の座標を解析。最終的にJPEG画像に変換した図面上にタッチポイントを自動配置していく方法を考案した。 「数千から数万枚もの図面1枚1枚に、人間がタッチポイントを設定していくのは天文学的な作業量です。TIS千代田システムズによる、アナログとデジタルを融合させた創意工夫で、目標のインタラクティブなUIを実現することができました」(村田氏)。
■PSTモバイルによる作業手順
❶ 事前に、PSTシステムから確認用データをダウンロード

❷ 現場でiPadを使って、アイソ図・P&ID、3Dモデルを表示

❸ 図面のサポート番号などをタップし、ポップアップで設置状況を入力

❹ Wi-Fi環境でPSTシステムと設置状況データを同期
評価
現場からのフィードバックを即座に反映するTIS千代田システムズの機動力
こうして「PSTモバイル」のプロトタイプが完成し、まずトライアルのかたちで現場での利用がスタートした。大量の紙を持ち込まずに済む点、降雨時でも端末操作がしやすい点などが利用者から好評を博し、徐々に適用現場を拡大していった。
国内プロジェクトで、本ツールを利用した感想を千代田化工建設の佐藤柊平氏はこう語る。「3Dモデルを見ながら配管位置・サポートを確認できる利便性は想像以上。複雑に入り組んだ配管から目的の場所を見つけるのは、ベテランにとってもかなり大変ですが、初心者でも作業をこなすことができます。また、建設途中では、予定する10本の配管のうち半分しか完成していないといったケースもあり、最終的な完成形の3Dモデルを見て、検査する位置を特定できることは担当者にとって大きな助けになります。実際に使用した弊社社員および協力会社のユーザーへのアンケートでは、95%以上の人がPSTモバイルに満足しているという結果が得られました」。(佐藤氏)
今回の共創プロジェクトを振り返って、村田氏はこう語る。「最初のトライアル時に現場から"図面上に直接メモを書き込みたい"という要望が出た際、TIS千代田システムズがトライアル完了前に『お絵描き機能』を実装してくれました。スピーディーかつ柔軟な対応に感銘しました」。
最後に、TIS千代田システムズへの期待を村田氏はこう語る。「エンジニアリング業界や当社の業務を知り尽くした、当社の事業継続に不可欠なITパートナーだと考えています。今後、PSTモバイルは、生成AIなどの最新技術を取り入れたり、外部システムとの連携を強化したりと、さらに使い勝手のよいものへと育てていけるよう、引き続きご支援いただきたいと思います」。
お客様から
現場中心の業務を経験してきた者にとって、思い描くシステムを具体的かつ論理的に、技術開発側が理解しやすいように言語化して伝えることは、非常に難しいものです。その点、TIS千代田システムズは、こちらが感覚的な表現で要望を伝えても、意図を的確に汲み取って対応してくれるため、大変感謝しています。今後も、金融業界や流通業界など他分野でのIT支援で得た知見に基づいたご提案をいただくことで、当社のツール群を加速度的に進化させていきたいと思います。
千代田化工建設株式会社
建設本部 工事部
村田 史彦氏
千代田化工建設株式会社
建設本部 建設業務部
業務セクション
業務サポートグループ
グループリーダー
比嘉 博幸氏
千代田化工建設株式会社
地球環境プロジェクト事業本部
国内エネルギー環境
プロジェクト部
化学・ガスプロジェクトセクション
佐藤 柊平氏
Company Data 千代田化工建設株式会社
グローバル本社:横浜市西区みなとみらい四丁目6番2号
みなとみらいグランドセントラルタワー
設立:1948年
事業内容:総合エンジニアリング事業
URL:https://www.chiyodacorp.com/jp/
TIS千代田システムズ担当者より
モバイルアプリをスクラッチ開発するという大きな挑戦でしたが、お客様とともに技術課題の解決策を考えることで困難な目標を達成できました。現場の方からも非常に好評で、お役に立てるツールをつくれたことを実感できました。その後、多くのプロジェクト現場で採用が進んでいることを、担当者として大変うれしく思います。今後も、千代田化工建設様の生産性向上に貢献できるよう、業務課題を解決するためのご提案や、システム開発における技術支援を継続していきたいと考えています。
TIS千代田システムズ株式会社
ITサービス事業部
プロジェクトITサービス部
主任
青山 宗平
※掲載されている情報は、2025年9月現在のものです。
※本文中の社名、製品名、ロゴは各社の商標または、登録商標です。