Strength
当社の特長
STRENGTH 1 事例
千代田化工建設株式会社
千代田化工建設のO&Mソリューション
「plantOS®」を支える
Azure基盤の構築から運用までを伴走サポート
千代田化工建設株式会社(以下、千代田化工建設)は、プラントのO&M(運転保守・管理)を通じた長期的支援を目指し、新たなトータルソリューション「plantOS®」を構想した。パートナーであるTIS千代田システムズは、クラウド上に同サービスの開発・提供基盤を構築するとともに、運用保守、そして開発チームの技術支援まで伴走し、plantOS®の進化に貢献している。
背景
プラントの運用・保守に特化したO&Mトータルソリューション「plantOS®」を構想
エンジニアリング大手の千代田化工建設は、創業以来70年以上にわたって、プラントのEPC※1をビジネスの主軸としてきた。同社はこのEPCビジネスに加えて、プラント引き渡し後のO&M※2を主要事業のひとつに位置付ける大きな決断を下した。
その背景を千代田化工建設の米山徹氏はこう説明する。「近年、プラントオーナー様は、脱炭素化への意識の高まり、人手不足や技術継承の問題など、大きな変化に直面しています。プラント完成後も、環境・社会の変化に柔軟に適応し、安全安心な企業活動を持続できるのか不安を感じておられます。そこで当社は、20年、30年と継続するO&Mを通じ、プラントのライフサイクル全体にわたってサポートし、安心安全な持続的企業活動、すなわち"ビジネスセーフティ"を提供したいと考えました」。
このトータルソリューションは「plantOS®」と命名され、さまざまなベンダーの優れた技術や、自社開発のツールを集約し、必要なものを組み合わせて利用できる提供形態が計画された。
plantOS®で提供するサービス群は大きく、デジタルツインやIoT技術に象徴される「デジタルフィールド」と、現場業務を支援する「フィジカルフィールド」。2つのフィールドのサービスを組み合わせることで、センサー情報を解析して現場へフィードバック、その結果に基づき、現場での点検作業を効率化するといった新たなO&Mのかたちが実現する。
そして、plantOS®のサービス第1弾となる、現場のIoT機器(センサー)から情報を受け取り、専門的な分析結果を提供するサービスである「O&M Mother」の開発も決定。この壮大なスケールの計画を実行に移すには、多種多様なサービス群を迅速・安全に開発し展開できるITインフラが不可欠となった。
※1 EPC:プラントの設計(Engineering)から調達(Procurement)、建設(Construction)までの一連の工程を指す。
※2 O&M:プラントの運用や保守を行うことを指す。Operation & Maintenanceの略。
■plantOS®とは

選択
plantOS®を支えるAzure基盤の構築・運用パートナーとしてTIS千代田システムズを選択
千代田化工建設はサービスの開発・提供基盤として、サーバ設備を自社保有するオンプレミスではなく、クラウドを利用する方針を決定した。「コスト効率や俊敏性の点でクラウドが圧倒的に有利。近年は、オンプレミスより優れたセキュリティも実装可能になり、当社にとって必然的な選択でした」(米山氏)。
そして、TIS千代田システムズをパートナーとして、複数のメガクラウドから最適なサービスを選定することとした。千代田化工建設の古市和也氏はこう語る。「同社にはこの数年来、AWS(Amazonウェブサービス)基盤の構築・運用をお願いしており、技術面で信頼を寄せていました。クラウドに強いSIerであることに加え、当社のplantOS®構想への深い理解がある点もパートナー選定の決め手でした」。
千代田化工建設は今回、それまで導入経験がなかったMicrosoftAzure(以下、Azure)に強い関心を示していた。「Azureは認証基盤において優位性があると考えました。多くの企業がMicrosoft 365を使っているため、Entra ID(旧Azure AD)をそのままplantOS®の認証IDとして使えることが、大きな訴求ポイントになります。また、IoTについてもAzure IoTというソリューションが比較的早くから提供されており、プラントに設置したセンサーとの連携を前提とする当社の利用形態に適していると考えました」(米山氏)。
そこで、AzureとAWSを比較検討し、TIS千代田システムズがそれぞれの利点や懸念される課題を洗い出し、両者で議論を重ねていった。そして、実際に小規模環境でレスポンスや安全性を検証し、AzureがplantOS®で求められる要件を満たすことが裏付けられ、採用が決定した。
構築
SaaS契約企業ごとにテナントを分離するマルチテナント方式で機密性を確保
採用決定後、TIS千代田システムズは、開発基盤かつサービス提供基盤となるAzure環境の構築に着手した。この際、千代田化工建設は、顧客ごとにAzureテナントを独立させるためマルチテナント方式の採用を希望した。その理由を米山氏はこう説明する。「plantOS®のサービスは、SaaSとしてお客様企業へ提供しますが、お客様ごとにプラント情報を厳格に分離して機密性を高めるため、テナントの独立性を確保したいと考えました。また、企業単位でEntra IDによるログイン認証の仕組みを実現するためにはマルチテナント環境であることが理想的でした」。
この要件への対応が、本プロジェクトにおけるTIS千代田システムズの最大の挑戦となった。「SaaSで顧客企業ごとにテナントを分けるという発想は、それまで聞いたことがありませんでした。これにより基盤の構築や運営にかかる手間・コストも大きくなるため、困難な挑戦になることが予想されました。そのため、実現に向けてマイクロソフト社にも協力を仰ぎながら慎重に進めていきました」(TIS千代田システムズ 佐藤貴章)。
これと並行して、マルチテナント環境のセキュリティ設定も実施。TIS千代田システムズは想定されるリスクを考慮し、Azure上で提供されるさまざまなセキュリティサービスから最適なものを選定し、コストとのバランスを考慮しつつ構成を固めていった。
この作業では、過去のAWSで得た知見を最大限活用したとTIS千代田システムズの佐藤は説明する。「AzureとAWSでは、機能に違いはありますが、クラウドセキュリティの設計思想やベストプラクティスは共通です。AWSでの経験がAzure環境における最適なサービス構成を検討するうえで大いに役立ちました」。
運用
運用から開発チームへの助言に至るまで、TIS千代田システムズがトータル支援
こうして、予定どおりplantOS®の第1弾「O&M Mother」は、顧客企業に向け提供をスタート。それから現在に至るまで、約5つのサービスが新たに開発され、同じAzure基盤上から顧客向けに提供されている。「TIS千代田システムズには、主にセキュリティアラートの監視などの運用をお願いしており、おかげで、安全面で安定したサービス品質が維持されています」(米山氏)。
また、TIS千代田システムズは、千代田化工建設のサービス開発チームを支援する役割も担っている。「ほぼ1日単位でAzureの課金をモニタリングし、開発時に予期しない高額課金が発生していないかを確認してもらっています。自社に閉じた管理体制は、クラウドサービスの課金体系を見落として高額な請求につながるケースがあるため、客観的なチェックは非常に助かっています」(米山氏)。
開発チームとTIS千代田システムズは、こうした接点を通じて関係が徐々に深まっている。「たとえばPythonでの開発に習熟したエンジニアでも、それがクラウドとなると課金体系を意識することが求められます。TIS千代田システムズには、どこに注意してクラウドネイティブなサービスを開発すればよいかといった、技術面での相談に対応いただいています」(米山氏)。
千代田化工建設は今後、plantOS®のサービスラインナップをさらに充実させていく予定。「ロボットによるプラント自動巡回サービスや、生成AIを活用したサービスなど、提供価値を一層高めていく計画です」(古市氏)。Azure基盤の運用保守を担当するTIS千代田システムズへの期待も大きい。「当社が目指す姿を最も深く理解してくれているパートナーだと感じています。今後もplantOS®のインフラ基盤を確実に支えていただき、お客様への提供価値の拡大を支援していただきたいと考えています」(米山氏)。
お客様から
TIS千代田システムズには、plantOS®の構想段階から、サービス開発・運用保守まで、全ライフサイクルを同一基盤で運営できる仕組みづくりに携わっていただき感謝いたします。今回の協業で、複数のサービスを迅速にAzure基盤上で展開でき、お客様への価値提供を加速できました。
plantOS®のサービス群はAzure基盤上から SaaSとして提供していますので、海外のお客様への展開も可能です。既に海外からplantOS®に関する問い合わせも増えてきており、これまでアプローチが難しかった地域への展開も視野に入れ、ビジネス機会の獲得を目指していきます。
千代田化工建設株式会社
地球環境プロジェクト事業本部
O&M-Xソリューション事業部
海外プロジェクト企画遂行セクション
セクションリーダー
アソシエイトフェロー
米山 徹氏
千代田化工建設株式会社
地球環境プロジェクト事業本部
O&M-Xソリューション事業部
plantOS®企画開発セクション
セクションリーダー 兼 CDO室 室長
工学博士
古市 和也氏
Company Data 千代田化工建設株式会社
グローバル本社:横浜市西区みなとみらい四丁目6番2号
みなとみらいグランドセントラルタワー
設立:1948年
事業内容:総合エンジニアリング事業
URL:https://www.chiyodacorp.com/jp/
TIS千代田システムズ担当者より
SaaSをマルチテナントで提供するという前例の少ないアーキテクチャと、厳格なセキュリティ要件を両立させることは、非常に挑戦的なテーマでした。お客様からはプロジェクト全体を通じて、当社のクラウド全般の経験・実績、そしてクラウドネイティブなサービス開発に関する広範な知見を高く評価していただきました。plantOS®基盤は今後も進化していくプラットフォームです。お客様のパートナーとして、その成長を支え続けていきたいと思います。
TIS千代田システムズ株式会社
プロジェクトITサービス部
エンジ&フロントライン・
オペレーション セクション
セクションリーダ
佐藤 貴章
※掲載されている情報は、2025年10月現在のものです。
※本文中の社名、製品名、ロゴは各社の商標または、登録商標です。